「まずい……」 勇者は焦っていた。 目の前には3つの棺。パーティーが全滅し、自分は神の加護で蘇った。 だがしかし、所持金は半減、預り所になど預けていない。その日その日で戦って→飲み会→戦って→宴会のローテーションで生きてきたツケがここにきて牙をむいていた。  死体の保存は問題ない。教会に預けておけば精霊の加護で腐敗もしない。 問題は―――ひとつだけ。 「―――アスナ……」  仲間の一人、エルフ族のアスナ。彼女を仲間にした際に勇者はエルフ族の長と非常にモメていた。というのも、アスナは次期族長であるエルフの男と婚約しており、嫁入り前の娘を旅に出すわけにはいかないと言われ揉めに揉めたのだった。  結局、一定の期間ごとにアスナが里帰りし、エルフの里で一晩を明かすことで渋々エルフ族が折れ、アスナは仲間になったわけなのだが――― 「―――こんな状態がバレたら……」  アスナのパーティー継続はご破算。加えてエルフ族と人間との間の友好関係にももれなくひびが入るだろう。世界の安寧と静謐のために戦っている勇者のせいで、だ。さりとて、無い袖は振れない。蘇生のために必要なGは足りないし、売り払えるようなものもない。仲間の装備を売るのは後のトラブルに成りえるし、自身の武器防具を売り払ってとなると、他のメンバーを蘇生するための飯のタネが消える。 「―――やむを得ない……か」  覚悟を決めるしかない。勇者はどうしようもない状況に思わず天を仰いだ。 【アメビが脳内のタイリクオオカミさんに任せて出力したTSモシャスものSS】  『 *** 勇者とエルフの民の絆伝説 (テレレレッテッテッテーン) *** 』 「―――やぁ、お帰り。アスナ」 「―――ええ、ただいま」  にこやかに微笑んで挨拶を返したアスナに、少し面食らったような顔を見せる族長の息子で、彼女の婚約者でもある男。名前は確か――― 「―――どうかしたの?オベイロン」 「い、いや―――少し驚いただけさ。―――しばらく見ないうちに随分と見違える美しさになったってね」  歯の浮くような言葉が良くもここまで出て来るものだ。と『勇者』は辟易した。 ―――そう。このアスナは「勇者」の変身した姿である。  他者の姿形、能力を模倣して変身することができる魔法「モシャス」 この力によって、死者となっているアスナの姿を借りて、勇者はアスナとしてエルフの里にやってきていた。  アスナが里に滞在する期間は一日だけ。ならば「一日だけ」アスナの振りをして耐え忍べばいい。やや反則な行動ではあるが、一日だけ、たった一日だけでいいのだ。と、勇者は自分自身に言い聞かせることで今回の行動に打って出たのだった。 「―――アスナ?」  返事をしなかったことで不信に思われたか?と勇者はやや思考して、―――やや俯き加減の状態からオベイロンを上目遣いに見て 「―――見え透いたお世辞ね」 と顔を背ける素振りを演じた。これで良いはずだ。アスナは婚約者にあまり良い印象を持っていない。ならば不機嫌を装うだけで事足りる―――。 「―――あぁ、すまない。気分を悪くしたかな。とりあえず、里に入ろうか」 「ええ、そうね」  二人で並んで里に向かう。向かう間も不思議な視線を感じたので、どうにかこうにかアスナの歩き方を思い出しながら演技を続けるのだった。 ******* ―――誰だコイツは? それはオベイロンの内心の呟きだった。  オベイロンとアスナはお互いを婚約者としている。ただしそれは、エルフの民の間で交わされた盟約であり、儀礼でしかない。 エルフの一族は長命種であり、新しい命が生まれるスパンが極めて長い。一説では、「エルフが一人死ぬと、夫婦のエルフの間に一人子供が生まれる」と言われている程で、エルフの民はその言い伝えを信じて、エルフが死んだときにすぐ次の世代が生まれて来るように儀礼的な夫婦を決めて置く。ただそれだけの話だった。 ―――だからこそ、アスナはオベイロンと接するとき、まるで人形の様だった。  気に食わない相手と極力話すこともない、視線を合わせることも少ない。こちらから話しかけてもなしのつぶてで、怒って見せると「申し訳ありません」と来たものだ。脈がないことなど千も承知。族長の子ということで自分の身を固めて置くことが必要と受けただけの冷めきった関係だった―――はずだ。  目の前のアスナは、ころころと表情を変える。時に拗ねて見せ、時に笑いかけて見せ、怒りをあらわにもする、子供のように喜んでみせる。 ―――これはアスナではない。  わかってはいるのだ。それが事実だとわかっている。 けれど指摘して煙のように消えてしまうとしたら、それが惜しいと感じてしまう。どうしようもなく恋焦がれる存在がそこに在る。  ―――蜂蜜酒の度数を強くしてしまったのは、きっとその躊躇いがあったからなのだろう。アスナが酒に酔うと見境なく絡み暴れる「酒乱癖」があることは、知っていたのにだ。 けれど不安を他所にアスナは暴れることもなくその場にゆっくりと倒れ伏して、泥酔のような状態で酔っ払ってしまっていた。 ―――やはり偽物だ。  疑心が確信に変わった。だからどうというわけでもない。どうしたいというわけでもないのだ―――何をやりたかったというのか?自分に問いかけても答えが出ない。 「―――もぉっろ、のむぅー……」 「ああ、ほらアスナ。今日はもう休もうね」 一先ず明日素面に戻った後で詰問することにしよう。そんな風に棚上げして、アスナの姿をした誰かを寝室に運ぶ。 ――――気が付けば、彼女を押し倒していた。  部屋に入りベッドに横になるなり、ホイホイと服を脱ぎ始め裸身を晒す娘の姿に―――アスナと同じ顔同じ裸身に ―――我慢などする気は毛頭なかった。 *******  最初の方は覚えていなかった―――。 強く握られすぎて「痛い!もっと優しく」とか文句を言っていた記憶がおぼろげにある。やわやわと肌に触れられている感覚に肌が熱くなって、じんわりと汗をかいて、切なげに声を上げてもいたようだ。 そして 「―――ぃひゅぃぃぃっっ!!?」 固くしこった乳首をぎゅっとつねられた瞬間に走った電流のような快感に悲鳴を上げたところで勇者の意識が覚醒した。 「だ、大丈夫か?」 「ら、らいりょうぶ……じゃなひ……」 未だ呂律の廻っていない声でひぃひぃと悲鳴を上げていると、ペロリとつねられた乳首を舐め上げられ、そのまま吸い付かれてモゴモゴと口の中で舐められ始める 「んひっ!?ぁ……も、ぁ……何……もぉ……❤」 「……痛そうだった、からね」  口を離してそう言うと、そのまま舌を這わせて乳房の周り、臍、腰周りとゆっくりと舌でなぞっていく。そのたびに、ピリピリとむず痒いような痺れが身体に走る。 ―――それは当然の話だろう。だってこいつは私《アスナ》の婚約者だ。 肌を重ねることだってしているだろうし、身体の反応だってよく知っている。何処が弱いのかも、熟知している。【だからこの反応になってもしょうがない】 「んぅ―――❤……は、ぁ……❤❤……ぁっ❤」 臍から下腹部に降りて、相手にされるがままに尻肉を揉みしだかれ声が止められなくなった。アスナの声で切なげに喘ぎ声を上げている自分が、本当に【勇者】なのか、自分で信じられなくなっていく――― ――― 一方で、オベイロンもまた余裕がなくなっていた。   エルフ族、オベイロンは【童貞】であった。 アスナという婚約者は居ても、その関係はひどく冷ややかな隔絶されたもので、肌に触れることすら叶わない。けれど婚約者がいる以上他のエルフの娘に手を出すのは憚られた。仮に他のエルフを側室として迎え入れたとして、そのタイミングで誰かが死んだ場合、正室となるアスナを差し置いて側室の娘が妊娠しかねない。そうなった場合の里のゴタゴタは火を見るよりも明らかだった。 ―――その自分の手で、女が悦んでいるという事実。 最初こそ力加減を間違えたが、硝子細工に触れるように優しく触れると甘い声を上げて切なげに吐息を弾ませ始めた。ピンと固く尖った乳首をつまむとビクリと身体を震わせて悲鳴を上げた。痛かったのかと舌で患部を舐める。勢いに任せて乳にむしゃぶりついてしまったのはご愛敬として、自分の手で、自分の舌で、彼女が雌の貌で喘ぐ様を見るのは、ちっぽけな自尊心を昂ぶらせた。  しとどに濡れた割れ目をなぞり弄りヒクヒクと動く様に包皮に包まれた陰核《クリトリス》を剥き上げて引き絞る――――― 「ぁっ❤ァぁッッ❤ヒッ、ぎゅゥゥゥゥゥッッッッ!!!!❤❤❤❤」  悲鳴のような声を上げて身体を大きくのけぞらせたアスナがそのまま力なくだらりとベッドに仰向けに転がる。ハァハァと荒い息を吐いているのでただ快楽に気を失っただけのようだった。 ―――イかせたのか? ―――イかせたのだ。 ―――自身の手で、女を絶頂させたのだ。  達成感と高揚感が内側から溢れ出し、爆発寸前に勃起した一物を引きずり出し、快楽に身を染めて荒い息をするアスナの裸身を前にしごき上げる。 「――――――うぅッッ!!!」  これまでのうっぷんが全部吹き飛ぶような絶頂の快感と、ピンクに火照った裸身を染め上げる自身のザーメンの白濁色に、おさまりが付かず、再びムクムクと起き上がるチ●ポを、まだ夢心地から戻ってきていないアスナの顔にこすりつける。  唇に竿に残ったザーメンをこすりつけるように動かすと、自分から吸い付いて来るアスナにゾクゾクとした支配欲が満たされる。そのまま頬の内側をチ●ポの先で擦り荒いするようにイラマチオを続け、がつんがつんと喉奥に叩きつける用に抽送し――― 「―――オォぉ……出すぞッッ!!」  その喉の奥に向けて、先ほどよりもたっぷりと大量射精を解き放っていた。 吐き出すことを許さずそのまま口を塞いでいると―――やがてごくんごくんと嚥下する音が響き始め、支配欲がより満たされていくのを、オベイロンは満足げにアスナを見下ろしながら感じていた。 ******* 「―――っ!」  夜半に、漸く意識が回復した勇者は、まず最初に自身の身体を見ろした。 それなりにふくよかな双丘としなやかな肉の付き方をした裸身。どうやらモシャスはまだ解けていないようだった。 「目を覚ましましたか」 ベッドの横で椅子に腰かけて本を読んでいたオベイロンがそう声をかけてきたことに身をこわばらせる勇者。オベイロンはそこ意地の悪そうな歪んだ笑みを浮かべたまま 「―――貴女、アスナじゃありませんねぇ?」 その言葉に、勇者の背筋に冷たい汗が過ぎる。 「―――いや、まぁ別にいいんですよ。それはそれで。ですが、決まりは決まりです。アスナがこちらに来ることができないという何か必要があるのでしょう? ―――ですから、アスナの代わりに貴女がアスナになりきってこちらに来るようにしてください。それで誤魔化してあげますよ。対価は頂きますがね」 じろりと舐める様な視線に、本来男であることも忘れて身体を護る勇者に、オベイロンは愉快そうに笑った 「アドバンテージはわたしのものです。あぁ、アスナにこのことを告げ口したりするのはお勧めしません。お互いに良い結果にならないでしょうからね」 遠回しにさっきまでの行為のことを言っているのだと直感で理解した。オベイロンにとって勇者はアスナそっくりの女だ。それがオベイロンと関係を持ったというのはエルフ族におけるスキャンダルであり、アスナの立場も危うくする。なによりアスナのプライドを著しく傷つけることだった。 「―――わかり、ました」  渋々承諾するしかない勇者は深々と頭を下げる。 帰る道すがら、じゅんと下腹部が熱くなったのは、アスナにM願望が在るのかもしれない などと関係ないことを思考していた。 ―――厄介なことになった。 と、勇者は思っていた。  このままアスナの姿でズルズルと関係を続けていくのは得策ではない。けれどアスナにこの関係がバレるのも問題になる。まだ魔王を倒してもいないのにこんなことでパーティーの間に亀裂を入れるわけにもいかない。  終局。魔王を倒して世界を平和にすることで、全ての問題をクリアしてからならばアスナと自分たちだけの問題になると結論付けて、魔王を早く倒さなければと焦燥感に駆られる一方で、次にオベイロンの下へ向かうことになった場合、一体どうなってしまうのかと考えると下腹部が熱くなるのを止められず、アスナがオベイロンに開発されてしまっている妄想を逃げ道に、身体が期待に熱を帯びる様に困惑し続ける勇者だった―――。 ―――厄介なことになった。 とオベイロンは思っていた。  実のところ、勇者のモシャスはとうに解けていた。 口内発射の余韻に、熱くなった思考を覚ますために水浴びを終えて戻ってきたオベイロンは、ベッドに横たわって気絶している勇者の姿を見たのだ。そこで全てを悟ったオベイロンだった―――のだが 「―――わたしは一体どうしてしまったのだ……?」  アスナにモシャスした勇者が、自分に向ける笑顔が、子供の様に拗ねた顔が、切なそうな声が、切羽詰まった絶頂の声が ―――愛おしいのだ。 アレはアスナではない。アスナではないのに、愛おしくてたまらなかった。かつてアスナに感じていた恋を、再びアスナの姿をした勇者の中身を知った上で、自覚してしまっていた。 「―――認めよう」  オベイロンは気絶する勇者を前に、自身の恋心を認めた。認めてしまったら、後はもう決まっていた。 「―――貴女を手に入れてみせる」 昏い支配欲と、淡い恋心と、深い愛情と、ドロドロとしした情欲が混沌に変わる。勇者をアスナとして里に呼び込み、今後も関係を続けていく方法。そのための交渉。そして 「今度は処女を捧げて貰おう」 そう考えるだけで勃起が収まらない。彼女がどんなふうに感じて乱れて狂ってくれるのかと想像しただけでそのまま射精してしまいそうだった。 「―――ああ、愉しみだ」 オベイロンは手に持った本を閉じ、月を見上げた。 *****  勇者一行の魔王討伐の話を語る上で、決して欠かせないのが「戦士アスナ」についての逸話である。 アスナはエルフ族の次期族長であるオベイロンの婚約者であり、当時のエルフの掟では外に出ることは許されなかった。しかしオベイロンと勇者、そしてアスナ自身の交渉により、条件付きでアスナを仲間として旅を続けることを承諾されたのだ。 このことから、勇者とオベイロン、アスナの間の強い友情が感じられる。 ―――ん……んむっ……❤……じゅる……ちゅ、じゅぶ……❤ 「あぁ…そう、そうですよォ……もっと舌を使って、喉の奥で咥えこむんだ―――」  また、アスナは勇者と旅を続けていくうちに勇者への淡い恋心を抱いていた。との噂もあり、パーティー内部の恋模様を描いた叙事詩なども多数存在する。だが、当時の資料ではそれが真実であったかどうかは定かではなく、むしろ、甲斐甲斐しく度々婚約者であるオベイロンの下へと里帰りするアスナとオベイロンの絆こそが正道であると語る話も少なくない。 「―――ごめんね?モシャスだと、アスナの情報で上書きされるから、オベイロンが前にやったことが、残らなくて」 「いいんですよ。毎回処女を捧げてくれる貴女がこんなにも愛おしい。何度でも何度でも、全身私の色に染め上げますから」 「―――うん❤私のぜんぶ、オベイロンで一杯にして―――」  大冒険の果てに魔王を討ち滅ぼした勇者たち一行は、王国に凱旋します。激戦の果て、生き残ったのは勇者一人だったと言われています。教会で蘇生を行う前に、勇者はともに戦った仲間の家族の下へ向かい、深々と頭を下げ謝罪したのだと記されています。 「勇者!!アスナはどうしたんですか?」 「アスナは……エルフの森に先に戻ったよ。オベイロンと結婚して、エルフの森を今度こそ護るらしい」 「―――そう、ですか……仕方ないですね。アスナにはエルフの掟がありましたから―――でも、さよならを言いたかったです」  しかし凱旋を果たした勇者の下に告げられたのはさらなる脅威である大魔王の存在でした。勇者は再び仲間を集め、地底世界へ向かわんと強く意気を上げます。 そのためにエルフの森に往き、アスナを再び仲間にと求めました。しかし、それはかないませんでした。その時アスナは「死亡したエルフの代わりに宿された新しい命」を護る仕事があったのです。 「大魔王のいる地下世界ならば、モシャスの効果を永続化させる方法があるかもしれませんね」 「なら……地下世界へ行かなきゃ……!!」  身重で宮殿から出られないアスナの代わりに立ち上がったのは、なんと次期族長であるはずのオベイロンでした。オベイロンと勇者の間には、やはり強い絆があったのです。偉大なるエルフの次期族長ということもあって、多くの魔法を操るオベイロンの力は、勇者の大きな助けになったと語り継がれています。 「私がついていないとモシャスの永続化の研究もできませんし、こうしてあなたを満足させることもできませんし、ねぇ?」 「ぁっ❤ぁっ❤❤オベイロンが、きてくれりゅ❤❤ならっ❤ひゃくにんりきぃぃぃ❤❤❤」  長い旅路の果て、勇者は大魔王を倒すことに成功します。しかし、地下世界と地上を繋ぐ大穴が大魔王の最期の力で封じられ、勇者たちは元の世界に戻ることを禁じられてしまったのです。  精霊の声により、大魔王が倒されたと報告を受けた地上の王たちは皆喜びました。しかし、エルフの里で戦勝の報告と、オベイロンが閉じ込められたことを報告に向かった伝令が見つけたのは、棺桶に入り自ら命を絶ったと思われるアスナの姿でした。アスナはオベイロンと勇者のいない世界に耐えられなかったのだと、エルフたちは涙したと言われています。  こうして、世界を救った勇者たちの伝説は、幕を閉じたのです――――。 「モシャスの永続化にも成功しましたし、やっと妊娠させてあげられますね」 「うんっ❤うんっ❤がまんしてきたぶんだけたくさんうむから、いっぱいせーしちょうだいッッ❤❤ゆーしゃのしそんたくさんふやそ❤❤」 ――FIN(?)